鳥の言語、獣のような性交、退屈なコード進行

 食器を洗う。掃除機をかける。野菜を切る。洗濯物を干す。ボタンを縫いつける。粘土を練る。文字を写す。塔を建てる。皮膚を剥がす。夢中になればなるほど心は透明に。無心・放心の体は視神経だけが機能して、脳は、和らいだ。ニューロンがほぐれてすっきりリラクゼイション。

 体調の、悪くなかった日。なかった。一五歳の年に一日だけあった気もする。ギター、鳴ると渦巻のように目が回る午後としての音色。低い午後もあれば高い午前もあるさ。BmからG、A、そしてDへと移りゆくコード進行を君は退屈だと笑った。手を動かすことは時間を捻じ曲げることだ。手仕事によってのみ僕たちは相対性理論の破壊可能性。壊すことは、作ることだ。作ることが壊すことであるように。エリーゼのためでもなく、誰のためでもなく。

 夜が加速する。僕は、僕が、この部屋に置き去りにされた。肩凝りの痛みだけが数メートル先で意気揚々と気張っている。それがどうした? 痛みは誰のものでもなかった。共有物だった。記憶の共有? だとしても、偽のそれを僕たちは掴まされている。心を放せ。言語から離れろ。それは動物になることではない。鳥には鳥の言語があるように、人には人の乳酸菌。獣のような性交。生殖は言語を超えてゆけ。(ゆった。Your letter. )代償として赤子は言語を習得するはずだから。