2022-01-01から1年間の記事一覧

最後の故意

最後の故意だった。 最初の、 真犯人候補はみぞおちで会いたい。 水際。 コッテコテの金属の、珠の、芯みたいなひらひらを複数個集めたい。 なんて嘘。 おおよその目安はついていた。 アリとキリギリスなんて嫌だ。 苦(クッ)。 冬は錯覚のような怠惰。 透明…

霊のいる場所

夜。一一時四二分。自転車を漕ぐ。恋人の家から帰る。ガードレールの脇に花。今日もある、と思う。この前もあった。その前も、その前の前も。新しく、鮮やかで、それゆえに場違いな花束。外灯に照らされ、やけに明るく見える花びらの発色。 半年ほど前、立て…

鳥の言語、獣のような性交、退屈なコード進行

食器を洗う。掃除機をかける。野菜を切る。洗濯物を干す。ボタンを縫いつける。粘土を練る。文字を写す。塔を建てる。皮膚を剥がす。夢中になればなるほど心は透明に。無心・放心の体は視神経だけが機能して、脳は、和らいだ。ニューロンがほぐれてすっきり…

約束された誤読、意図された誤記

しばらく日記を書いていなかった。椅子を新しくした。気温が上がってきて、気づいたら夏になっている近未来。もうすぐそこだ。生活、という死ぬために生きている時間の一方的な流れを、無意識のうちに是認している。その怖ろしさは夜に顔を覗かせる。鏡の中…

佐川恭一『アドルムコ会全史』感想

佐川恭一の新刊、『アドルムコ会全史』。今作も随所に佐川節が炸裂する傑作である。以下、感想を述べていく。 (ネタバレあり。ご注意ください) 「アドルムコ会全史」 表題作。数ページごとに思わず噴き出してしまいそうな(実際に何度も噴き出した)フレー…